短歌に興味を持ち始めたんだけど、
どんな歌集を読んだらいいの??
この記事ではそんな悩みにお答えします!
選書の基準
・歌の意味が分かりやすく
・歌への共感や驚異をしっかり感じられる
初心者の方が短歌の魅力をしっかり味わえる歌集をチョイスしてみました!
イマジナシオン(作:toron*)
まず紹介したいのはtoron*さんの歌集『イマジナシオン』。
この歌集の魅力は何といっても言葉選びやシーンを的確に表現する「美しさ」にあると思います。
『イマジナシオン』 26ページ 連作「転生譚」より引用
ぎんやんまみたいに頬に触れるからしばらくわたしは静かな水面
上記の歌は恋人同士のふれあいとトンボが水面にふれるシーンを重ねたもの。
切り取るシーンの美しさはもちろん、それを表現する言葉選びも美しく二つのシーンが巧みに繋げられています。
本書にはこのように全く異なるシーンを重ねることで詩情を生み出す美しい歌が多く詰まっています。
この歌集を読み切るころには、頭のなかにいくつもの美しい世界が生まれているはず。
「歌の美しさ」や「比喩の力」を感じたい人には特におすすめしたい一冊です。
滑走路(作:萩原慎一郎)
この歌集は世にも珍しい映画化された歌集です。
ここには苦しみながら生きた作者の「人生」が詰め込まれています。
収録されている歌はどれも「まっすぐな表現」で「自身の思い」を切実に伝えてきます。
文庫版『滑走路』 27ページ 連作「風景画」より引用
夕焼けをおつまみにして飲むビール一篇の詩となれこの孤独
この歌には難解な言葉や技巧は使われておらず、ストレートなシーン描写と感情描写に徹しています。これはおそらく短歌をほとんど読んだことがない人が読んでも伝わる一首だと思います。
上記の歌以外もまっすぐな描写で孤独や、非正規雇用されている自身の生きる日々をひたむきに描いています。
この歌集は日々生きているなかで「さびしさ」や「生きづらさ」を感じる人には特に刺さる一冊だと思います。
加えてこの歌集は文庫版が出版されており比較的安価で手に入れられる点もおすすめポイントのひとつです。
水上バス浅草行き(作:岡本真帆)
Twitter上で短歌がバズった岡本真帆さんの第一歌集。
この歌集の魅力は何といっても「コミカルな視点」と「共感性の強さ」にあると思います。
『水上バス浅草行き』 13ページ 連作「犬がいる!」より引用
ほんとうにあたしでいいの?ずぼらだし、傘もこんなにたくさんあるし
上記の歌はTwitter上でも話題になった岡本さんの代表歌。
読者の心をくすぐるような独特かつコミカルな視点と「傘がたくさんある」という共感を呼ぶシーンの切り取り方。
岡本さんの歌は読者をくすっと笑わせる、ハッピーな魅力にあふれています。
そしてそのコミカルさがあるからこそ、ふっと現れるやさしさや切なさが引き立ちます。
肩肘をはりすぎずまずは楽しみながら歌を読みたい、そんな方には特におすすめの歌集です。
水中で口笛(作:工藤玲音)
小説やエッセイでも活躍する工藤玲音さんの第一歌集。
工藤さんの歌の魅力は何といってもその「物語性」にあります。
『水中で口笛』 22ページ 連作「すもも齧る」より引用
かき氷だったピンクの水を飲み全部殴って解決したい
かき氷の描写からまったく予想しない下の句をぶつけられて、読者は様々な想像をすることになります。
かき氷を食べている相手と何か議論しているのだろうか。面倒な別れ話でもしているのだろうか。それとも……。
工藤さんの歌を読むとその歌の中、あるいは裏にあるストーリーを思わず想像してしまいます。
それにより歌に奥行きが生まれ、歌の引力をより強固なものに。連作の深みをより濃いものにしています。
読者に「想像の余地」を与え歌の中に引き込んでいく独特な視点と表現。
工藤さんの歌は一度ハマると抜け出せない魅力にあふれています。
最後に
いかがでしたでしょうか。紹介した歌集のなかに気になる一冊はあったでしょうか。
当然ながらここで紹介している以外にも、世に出ている歌集は山のようにあります。
気になる歌集を見つけたら、是非手に取って読んでみてください。
そしてそのなかから自分のお守りになるような一冊を。お守りになるような一首を。あなたが見つけることを願っています。