東京歌壇
■2022.3.13 東直子選
ロッキングチェアーが揺れる僕たちはいつもかなしい顔をしている
■2022.5.15 東直子選
どの骨も嘘だと思う炎天のした生きていた祖父の収骨
■2022.6.12 佐佐木定綱選
証人の欄にしづかな俺がゐるやさしき友の結婚届
■2022.7.24 東直子選 特選一席
両親の離婚協議を聴きながらアクアリウムになる胸がある
■2022.11.20 東直子選
がらがらの打ちっぱなしに祖父といた秋晴れの日はあった気がする
■2023.3.26 東直子選
ポケットの鍵を探して安心も不安も鉄の感触がする
読売歌壇
■2023.4.3 黒瀬珂瀾選
戦わない戦いがある君に合う装備はりんご飴だと思う
■2023.7.3 黒瀬珂瀾選 三席
俺いつか死ぬんだけどな青空を見つつゆっくり入れるガソリン
■2023.9.4 俵万智選 一席
どの雲もくじらに見える夏があり君を家族と呼んでもいいか
■2023.11.20 黒瀬珂瀾選
傷を持つZIPPOライター少しだけ俺は自分が好きな気がする
■2023.12.25 俵万智選
湯豆腐をあなたと食べて冬のことあたたかいって思ってたっけ
朝日歌壇
■2024.5.12 馬場あき子選
首だけのマネキンばかり並んでて帽子専門店の憂鬱
NHK短歌
■2021.7.18 大森静佳選 題『まだ・もう』
星の死が遅れて届くベランダにもう使わない君のサンダル
■2022.3.6 田村元選 題『食べる』
窓枠を額縁にして雪が見る蜜柑を食べている私達
■2022.7.17 江戸雪選 題『デート』
さっきまで笑ってたのに地下鉄の窓はさびしい顔を映して
■2023.2.12 笹公人選 題『ラーメン』
真面目さが取り柄と言われシンプルな醤油ラーメンみたいな僕だ
■2022.2.26 佐佐木定綱選 題『火』
玄関を出てセッターに火をつけて祖父は夜空を見る日がふえた
たんたか短歌
■2021.7.6
ベランダで閑かに雨を受け入れる海を忘れたビーチサンダル
■2021.12.7 特選
夕立ちに差す傘はない唐突にあなたの恋を聞く喫茶店
■2021.12.21
僕が持つ花火に着いた火をあげるように指から手をつなぐ夜
■2022.7.19
桃色のラインマーカー愛なんてあればあるほどよくないですか
■2022.10.4
手を離れ 青々と咲くネモフィラの近くが揺れる遠くが揺れる
■2023.1.3
砂浜が砂を一粒なくしても砂浜でしょう 君のいた星
■2023.5.16
花だったころの記憶を持ったまま生まれたように君は微笑む
■2023.6.20
雨の日のバスはおおきな傘になりちいさな傘を乗せては降ろす
■2023.8.15
ゆっくりと祖父が動かす指先でなんて自由な盤上の飛車
■2023.10.3
一枚の手紙となって家を出るあなたに伝えたいことがある
■2024.1.16
君は美を仕上げるように駆け出してポニーテールに風を編み込む
■2024.2.6
僕だけを乗せたバスだと思うときバスの一部になる運転手
■2024.3.19
おだやかな首長竜の面持ちで僕を静かに照らす街灯
■2024.4.2 特選
虎になり寝ている夢を見たと言うあなたはどんなときもやさしい
その他
■第十三回角川全国短歌大賞 永井和宏選 秀逸
カーテンが一度膨らみ風を産む一瞬なんだ人生なんて
■第二十四回NHK全国短歌大会 三枝昂之選 秀作
なず死ぬと軽くなるのか手のひらで命の意味を問ふ兜虫
■NHK学園令和三年度冬の誌上短歌大会 小島なお選 秀作
一面のコスモス畑咲いている中で散るものに気付けない
■ダ・ヴィンチ2022.9月号 短歌ください
鼻をかむティッシュを投げるごみ箱を外れて部屋がごみ箱になる
■ダ・ヴィンチ2023.1月号 短歌ください
バス停はポストに似てて僕たちは手紙に似てた雪の降る街